ETFと投資信託の違いについて~どちらを選ぶべきか?~

【ETFと投資信託】基本的な仕組みとは? 

ETF(上場投資信託)の仕組み

ETFは、「Exchange Traded Fund」の略で、上場投資信託とも呼ばれます。その名の通り、株式市場に上場されている投資信託で、株式のように取引所で自由に売買することができます。ETFは、特定の指数(インデックス)に連動するように設計されており、例えば日経平均株価やS&P500といった市場の代表的な指数に連動するETFが多くあります。これにより、個別銘柄を選ばなくても、ETFを購入するだけでその指数に含まれる多くの銘柄に分散投資ができるのが大きな特徴です。

ETFの基本的な仕組みは次のようなものです。

  • 取引所で売買:ETFは株式と同様に証券取引所に上場されており、リアルタイムで価格が変動します。投資家は証券会社の口座を通じて、市場が開いている時間帯であれば自由に売買することができます。
  • リアルタイム価格:ETFは市場で取引されるため、株式と同様にリアルタイムで価格が変動します。これにより、投資家は好きなタイミングで価格を見ながら売買できるというメリットがあります。
  • 低コスト:ETFはインデックスに連動するため、運用コストが比較的低いのが特徴です。ファンドマネージャーが積極的に運用を行わない「パッシブ運用」であるため、信託報酬などの手数料が低く抑えられます。

投資信託の仕組み

一方、投資信託は、投資家から集めた資金を一つの「ファンド」にまとめ、プロのファンドマネージャーが運用する商品です。投資信託には様々なタイプがあり、株式債券不動産などに分散して投資するファンドや、特定のテーマに基づいた投資を行うファンドなどが存在します。投資家は、投資信託を購入することで、少額でも多様な資産に分散投資することができるのがメリットです。

投資信託の基本的な仕組みは次の通りです。

  • 運用のプロが管理:投資信託は、ファンドマネージャーと呼ばれる運用のプロが投資先を選定し、資産運用を行います。これにより、投資家は運用の知識や経験がなくても、プロの判断に基づいて資産運用を行うことができます。
  • 1日1回の基準価格で取引:投資信託は、ETFとは異なり、1日に1回だけ基準価格(NAV:Net Asset Value)が決定され、その価格で売買されます。リアルタイムでの価格変動はないため、売買のタイミングを細かく調整することはできません。
  • 手数料がやや高め:投資信託には、ファンドマネージャーが運用を行う「アクティブ運用」と、インデックスに連動する「パッシブ運用」がありますが、特にアクティブ運用型の投資信託は運用コストが高くなる傾向があります。信託報酬や販売手数料がかかるため、長期投資ではコストをしっかりと把握することが重要です。

【配当金と税金の仕組み】資産形成における効率的な運用方法とは?

配当金の仕組み

ETFと投資信託の配当金の仕組みにはいくつかの違いがあります。ETFの場合、保有する株式や債券から得られる配当金を定期的に投資家に現金で支払います。受け取った配当金は、再投資することも可能です。ただし、配当金を現金で受け取る場合、その時点で税金が発生します。

一方、投資信託の場合は「分配金」という形で配当が支払われ、特に再投資型の投資信託では、この分配金が自動的に再投資されます。この仕組みにより、複利効果を活かして長期的に資産を増やすことが可能で、再投資される分についてはすぐに課税されません。

税金の仕組み

ETFと投資信託の税金に関しては、基本的には日本国内の税制で同じ扱いを受けますが、配当金の扱いや取引のタイミングに応じて税金が異なることがあります。ここでは、主に配当金の課税売却益に対する課税に焦点を当ててみましょう。

配当金にかかる税金(分配金)

配当金や分配金に対しては、約20.315%(所得税15.315%、住民税5%)の税金がかかります。これは、ETFでも投資信託でも同様です。ETFの配当金を現金で受け取る場合や、投資信託の分配金が支払われた場合には、その都度税金が差し引かれます。

  • ETFの配当金
    配当金は、現金として受け取るとその時点で課税されますが、再投資しない限り、追加の運用益を得るチャンスを失う可能性があります。また、海外ETFの場合は、現地の税金も課せられるため、二重課税になるリスクがあります。この場合、確定申告を通じて外国税額控除を申請することで、重複課税を軽減できる場合があります。
  • 投資信託の分配金
    分配金が自動的に再投資される投資信託では、現金として受け取らないため、その分を複利で増やすことができるのがメリットです。分配金が再投資される場合、すぐに課税されることはなく、実質的に運用が続くため、税金のタイミングを後回しにできます。これにより、税金による運用効率の低下を防ぐことができます。

売却益にかかる税金

ETFや投資信託を売却して利益が出た場合、その売却益に対しても約20.315%の税金がかかります。この税金は、株式やその他の金融商品と同様に、利益確定時に一度に支払う形となります。

  • ETFの売却益
    ETFを売却して利益を得た場合、その利益に課税されます。ETFは配当金を受け取ることで、途中で税金を支払うタイミングが多くなるため、長期運用の場合には税金の影響が運用パフォーマンスに影響する可能性があります。
  • 投資信託の売却益
    再投資型の投資信託では、分配金が再投資されるため、売却時まで課税されることはありません。そのため、複利効果を最大限に活用し、売却時に初めて課税される形になります。長期的な投資家にとっては、税金を繰り延べることができる点が大きな利点です。

【ETFと投資信託、どちらを選ぶべきか?】選び方のポイント 

投資スタイルに応じた選び方

短期売買を好む投資家にはETFが向いている

ETFは、株式と同じように証券取引所でリアルタイムに売買できる商品です。市場が開いている時間であればいつでも購入や売却が可能で、価格も株価のように絶えず変動します。そのため、タイミングを見計らって売買をしたい、短期的な利益を狙いたいという投資家にとっては、ETFが魅力的です。

  • メリット:リアルタイムで売買できるため、短期的な値動きに対応可能。
  • デメリット:売買ごとに手数料がかかるため、頻繁な取引を行うとコストがかさむ可能性がある。

長期運用を重視する投資家には投資信託が最適

一方、投資信託は、長期的に資産を増やしたい投資家に適しています。投資信託の価格は1日に1回だけ決定され、その基準価格で取引が行われます。したがって、短期的な市場の値動きに左右されにくく、ゆったりとしたペースで運用を続けることができます。また、多くの投資信託では分配金を再投資することができ、複利効果を得ることができるのも長期投資において有利なポイントです。

  • メリット:長期的な資産形成に向いており、運用の手間が少ない。
  • デメリット:リアルタイムの売買ができず、売却までに時間がかかることがある。

コストを重視するかどうか

手数料が低いETFはコスト重視の投資家に有利

ETFの運用コストは一般的に低く抑えられており、信託報酬(運用手数料)も低めに設定されています。これは、ETFの多くが「パッシブ運用」を採用しているためで、市場の指数に連動する運用が中心です。特に長期的に運用する場合、運用コストの差がリターンに大きな影響を与えるため、コスト意識の高い投資家にはETFが魅力的です。

  • メリット:信託報酬が低く、コスト効率が良い。
  • デメリット:売買時に証券会社に支払う取引手数料が発生するため、頻繁に取引を行うとコストがかさむ。

投資信託はアクティブ運用型の場合コストが高い

一方、投資信託にはアクティブ運用型のものもあり、ファンドマネージャーが積極的に運用するため、運用コストが高くなる場合があります。アクティブ運用型の投資信託は、リスクを取って市場平均を上回るリターンを目指すことが多いため、信託報酬が高く設定されていることが一般的です。パッシブ運用型の投資信託であれば、ETFと同様に低コストで運用できることもあります。

  • メリット:アクティブ運用型の場合、運用のプロが市場の平均を超えるリターンを狙う。
  • デメリット:アクティブ運用型は信託報酬が高く、コストがかさむ可能性がある。

配当金や分配金の再投資をどう考えるか

ETFの配当金は現金として受け取るか、再投資するかを選べる

ETFでは、保有している株式や債券から得られる配当金を現金として受け取ることができますが、再投資することも可能です。配当金を現金で受け取る場合、その時点で税金が発生します。再投資することで複利効果を得られますが、再投資は自分で行う必要があるため、手間がかかる場合もあります。

投資信託は分配金の自動再投資が可能

多くの投資信託では、分配金を自動的に再投資する設定ができ、複利効果を期待できます。再投資される分はその時点で課税されることがなく、運用期間中に資産を効率よく増やすことが可能です。この点で、投資信託は自動で資産形成を進めたい投資家に適しています。

流動性を重視するならETF

ETFは、証券取引所で株式のようにリアルタイムで売買できるため、流動性が非常に高いです。市場の動きに応じてすぐに資金を現金化できるため、急な資金需要がある場合や、市場の急変に対応したい場合に便利です。

一方、投資信託は1日に1回しか基準価格が決まらないため、流動性はETFよりも低く、すぐに現金化したい場合には不便です。長期的な資産運用を考えている投資家にとっては、それほど問題になりませんが、緊急時の対応を考える場合は、流動性の違いを考慮する必要があります。

結論

ETFと投資信託の選択は、投資家の目指す投資スタイルや目的によって大きく異なります。短期的な売買を重視し、リアルタイムで市場の動きに合わせて取引を行いたいならば、流動性が高く手数料も低いETFが適しています。一方、長期的な資産形成や再投資の複利効果を活用したい場合は、投資信託がより有利です。特に、分配金の自動再投資を通じて、手間をかけずに効率的な運用を進めることができます。

コスト面でも、ETFはパッシブ運用による低コストが魅力的ですが、アクティブ運用を行う投資信託では、市場平均を上回るリターンを目指すことが可能です。配当金や分配金の課税や流動性の違いも考慮に入れ、自分の投資目標やリスク許容度に応じて、最適な選択を行うことが重要です。