障害年金と老齢年金は、どちらも公的年金ですが、同時に受給できるのか? という疑問を持つ人は多いでしょう。併給できる場合と、どちらかを選ぶ必要がある場合があり、受給額や条件によって最適な選択が異なります。
この記事では、障害年金と老齢年金の併給の可否、受給調整の仕組み、併給を活かす戦略、手続きの流れ についてわかりやすく解説します。
障害年金と老齢年金の基本的な仕組みとは?
障害年金と老齢年金はどちらも公的年金制度の一部ですが、目的や受給条件が異なります。違いを理解しておくと、将来の年金受給時に役立ちます。
障害年金とは?
障害年金は、病気やケガによって日常生活や仕事に支障が出た場合に受給できる年金です。
📌 対象者:障害等級1級~3級に該当する人
📌 受給要件:一定の保険料納付期間を満たしていること
📌 支給開始:初診日から1年6か月後
📌 受給期間:障害の程度に応じて継続(更新が必要な場合あり)
ポイント
- 障害基礎年金(主に国民年金加入者が対象)
- 障害厚生年金(厚生年金に加入していた人が対象)
- 障害の程度によって受給額が変わる
- 更新時の診断結果によって支給が継続・変更・停止されることがある
老齢年金とは?
老齢年金は、高齢になり仕事を引退した後の生活を支えるための年金です。
📌 支給開始年齢:原則65歳(繰上げ・繰下げ可能)
📌 受給資格:最低10年以上の年金保険料を納めていること
📌 受給期間:生涯にわたって支給される
ポイント
- 老齢基礎年金(国民年金の加入者が対象)
- 老齢厚生年金(厚生年金に加入していた人が対象)
- 繰上げ受給(60歳~):早くもらえるが減額される
- 繰下げ受給(75歳まで):遅くもらうと増額される
障害年金と老齢年金の違い
🔸 障害年金:働けない人を支援するための年金(若い世代でも受給可能)
🔸 老齢年金:高齢になってから生活を支えるための年金(原則65歳から)
両者は目的が異なるため、受給資格や支給のタイミングが違います。受給できるかどうかを確認し、最適な申請方法を選びましょう。
障害年金と老齢年金は同時に受給できるのか?
障害年金と老齢年金はどちらも公的年金制度に基づいた給付ですが、同時に受給できるのかどうかは条件によって異なります。受給資格や調整の仕組みを理解し、最適な年金受給プランを考えましょう。
併給(両方の年金を同時に受け取る)できるケース
障害年金と老齢年金は、基本的にどちらか一方を選択する仕組みですが、特定の条件を満たせば併給が可能になります。
併給できる代表的なケース
- 老齢基礎年金+障害厚生年金
➡ 65歳以降、老齢基礎年金を受給しながら障害厚生年金を受け取ることが可能。 - 特例として老齢厚生年金+障害基礎年金
➡ 条件によっては両方を同時に受給できる場合があるが、例外的なケース。
どちらのケースも、加入していた年金の種類や受給資格の有無によって異なります。
併給できないケースと調整の仕組み
原則として、老齢厚生年金と障害厚生年金の両方を同時に受給することはできません。 これは「同じ年金制度(厚生年金)からの二重給付を防ぐ」という制度上のルールによるものです。
併給できない例
- 老齢厚生年金と障害厚生年金 → どちらか一方を選択
- 老齢基礎年金と障害基礎年金 → どちらか一方を選択
ただし、受給額が大きいほうを選べるため、年金額を比較して有利な方を選ぶことが重要です。
受給額を最大化するための選択方法
障害年金と老齢年金のどちらを優先するかは、受給額や将来の生活設計を考慮して決める必要があります。
✅ 選択のポイント
🔸 障害年金の方が受給額が高い場合 → 障害年金を選択し、老齢年金は受給しない
🔸 老齢年金の方が受給額が高い場合 → 障害年金を辞退し、老齢年金を受給する
🔸 併給できるケースでは両方の金額を比較し、最適な方法を選択
また、年金の受給開始年齢を繰り下げることで年金額を増やすことも可能です。例えば、老齢年金の受給を70歳以降に繰り下げると、年金額が42%増額されるため、長期的に見て有利になることがあります。
申請時の注意点と手続きのポイント
障害年金と老齢年金を併給または選択する際には、事前に年金事務所でシミュレーションを行い、どちらの受給方法が有利か確認することが重要です。
手続き時のポイント
- 年金額を比較し、より有利な方を選択する
- 受給開始年齢の繰り上げ・繰り下げを検討する
- 併給が可能か、個別のケースごとに確認する
また、年金受給額は毎年見直されるため、定期的に最新情報をチェックし、最適な選択をすることが大切です。
受給調整の仕組みと影響を受けるケースを解説
障害年金と老齢年金の両方を受給できる場合でも、年金額が調整されることがあります。これは、「二重給付を防ぐ」 という年金制度のルールによるものです。どのようなケースで受給額が調整されるのか、具体的な仕組みを解説します。
受給調整とは?
受給調整とは、障害年金と老齢年金を同時に受給する際に、一定の条件下でどちらか一方の年金の支給が停止または減額される仕組み のことです。
調整が行われる理由
- 年金財源の公平な分配を目的としている
- 同じ年金制度(厚生年金など)からの二重受給を避けるため
- 受給資格が重複する場合に、より適正な給付額にするため
この仕組みがあることで、一部の年金が停止または減額されることがあります。
受給調整の対象となるケース
年金の種類によって、調整が発生するかどうかが決まります。
受給調整の対象になる主なケース
老齢厚生年金と障害厚生年金を両方受給する場合
➡ どちらか一方の年金を選択する必要がある。(両方の満額支給は不可)
障害等級の変更により、受給資格が変わる場合
➡ 例えば、障害等級が軽くなった場合、障害年金が停止される可能性がある。
遺族年金を受給している場合
➡ 障害年金や老齢年金と併給できるかどうかはケースによる。(優先順位が決まっている)
一方で、老齢基礎年金と障害厚生年金は同時に受給できるため、調整の対象にはならない ことも覚えておきましょう。
受給調整の仕組みと影響
年金額の調整は、受給者の年齢や障害の程度、加入していた年金の種類によって異なります。
主な影響
- 年金の一部が支給停止される可能性がある
- 支給額が減額されるケースがある
- 障害等級が変更されると、受給資格そのものが変わることがある
例えば、65歳になったタイミングで、障害厚生年金を受給していた人が老齢厚生年金の受給資格を得ると、年金事務所からどちらかを選択するように求められる ケースがあります。このとき、金額の多い方を選ぶのが一般的です。
受給額を減らさないためのポイント
受給調整によって年金が減額されるのを防ぐためには、事前の準備と適切な手続きが重要です。
✅ 注意すべきポイント
🔸 どちらの年金を選ぶべきか、年金事務所でシミュレーションを行う
🔸 障害等級の更新時期を確認し、受給資格が維持できるかチェックする
🔸 受給開始年齢(65歳)に達する前に、どの年金を優先するか考えておく
また、老齢年金の繰り下げ受給を選択することで、障害年金の受給期間を長く維持し、結果的に受給額を増やす戦略も考えられます。
受給調整の仕組みを理解し、年金額が減額されるリスクを抑えることで、より有利な年金受給計画を立てることができます。
併給を最大限に活かすための戦略とは?
障害年金と老齢年金を併給できる場合、戦略的に受給方法を選択することで年金額を最大化できます。どのような方法を取るべきか、具体的な戦略を紹介します。
老齢年金の繰下げ受給を活用する
老齢年金は65歳から受給開始できますが、繰下げることで年金額が増えます。
繰下げ受給の仕組み
- 受給開始を1年遅らせるごとに8.4%増額
- 75歳まで繰下げると最大84%増額
- 障害年金を受給しながら老齢年金の開始を遅らせることで、将来の年金額を大きく増やせる
特に障害年金の支給が続いている間は、老齢年金を繰下げることで損をせずに受給額を増やせるため、賢い選択肢となります。
65歳以降の最適な受給方法を選択する
65歳になると、障害年金と老齢年金のどちらを受給するかを選ぶ場面が出てきます。
比較すべきポイント
- 障害年金の方が受給額が高い場合 → 老齢年金の受給を遅らせる
- 老齢年金の方が受給額が高い場合 → 障害年金を停止し、老齢年金を受給
- 老齢厚生年金がある場合 → 老齢基礎年金を繰下げて増額しながら受給する
年金事務所でシミュレーションを行い、どちらが有利になるかを事前に確認することが重要です。
働きながら年金を受給する戦略
障害年金や老齢年金を受給しながら働く場合、収入とのバランスを考えることが重要です。
収入と年金を両立するためのポイント
- 障害年金は就労しても受給できる(ただし、障害の程度によっては支給停止の可能性あり)
- 老齢厚生年金は収入によって減額される場合がある(一定の年収を超えると支給停止)
- パートや時短勤務を活用し、収入を調整することで年金を満額受給することが可能
障害者雇用枠で働く場合、給与を調整しながら年金と労働収入を組み合わせた安定収入を確保する方法も考えられます。
受給額を増やすための見直しポイント
障害年金や老齢年金の受給額は、申請方法や状況によって変わることがあります。
見直しを検討するべきポイント
- 障害等級の変更申請(障害が悪化した場合、等級変更で年金額が増える可能性)
- 加給年金の適用確認(配偶者や子どもがいる場合、加給年金が支給されるケースがある)
- 過去の年金記録の確認(未払い期間がある場合、追納や救済措置を活用できる)
特に、障害等級が変更されるタイミングでは、年金事務所に相談して受給額を最適化することが重要です。
適切な受給戦略を立てることで、障害年金と老齢年金を最大限に活用できます。
併給のための手続きと必要書類の準備
障害年金と老齢年金を併給するためには、適切な手続きと必要書類の準備が欠かせません。スムーズに申請を進めるためのポイントを解説します。
併給の手続きの流れ
- 受給資格の確認
➡ 併給が可能か、年金事務所や日本年金機構のウェブサイトで確認する。
- 年金事務所に相談・予約
➡ 必要書類を事前に確認し、申請方法を確認する。
- 必要書類を準備し、申請書を記入
➡ 記入ミスを防ぐため、チェックリストを活用する。
- 書類を年金事務所に提出
➡ 窓口または郵送で提出し、控えを保管しておく。
- 審査・決定通知を受け取る
➡ 通常1~3か月で審査結果が通知される。
申請に必要な書類
年金の併給申請には、年金の種類ごとに異なる書類が必要 です。事前に準備しておくと、申請がスムーズに進みます。
共通で必要な書類
- 年金請求書(老齢年金・障害年金のどちらの請求書も必要)
- 本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証・パスポートなど)
- 振込先の金融機関の口座情報(通帳のコピーまたはキャッシュカードのコピー)
- 年金手帳または基礎年金番号通知書
障害年金を受給する場合に追加で必要な書類
- 障害年金証書のコピー(既に受給している場合)
- 障害の診断書(必要に応じて更新時に提出)
- 病歴・就労状況等申立書(障害の状況を詳しく記載する書類)
老齢年金を受給する場合に追加で必要な書類
- 年金加入期間確認書類(厚生年金の加入履歴がある場合)
- 配偶者や扶養家族の情報がわかる書類(加給年金の対象になる場合)
書類に不備があると、手続きが遅れる可能性があるため、事前にチェックリストを作成し、漏れがないように準備 しておくことが重要です。
手続き時の注意点
申請前に確認すること
- 申請期限を守る(遅れると受給開始が遅れる)
- 書類の不備を防ぐ(記入ミスや不足書類に注意)
- 併給条件を正確に把握する(不明点は専門家に相談)
受給開始後に必要な手続き
- 住所・振込先の変更届
- 障害等級の再認定申請(必要に応じて)
- 加給年金の変更申請(配偶者の状況が変わった場合)
併給手続きは複雑ですが、早めの準備と正確な申請でスムーズな受給を目指しましょう。
まとめ
障害年金と老齢年金は、特定の条件を満たすことで併給が可能ですが、同じ年金制度からの二重受給は制限されるため、適切な選択が求められます。65歳を迎えた際には、障害年金と老齢年金のどちらが有利か比較し、受給額が最大になる方法を選ぶことが重要です。
また、老齢年金の繰下げ受給を活用することで、将来的に年金額を増やすことも可能です。働きながら年金を受給する場合の影響や、手続きの流れも事前に理解しておくと安心です。受給調整や併給の条件は個々の状況によって異なるため、年金事務所や専門家に相談しながら、最適な受給方法を選びましょう。