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紙幣とは?
紙幣には、政府が発行する政府紙幣 (Print money) と、銀行(中央銀行など)が発行する銀行券 (Bank note) があるが、特定地域だけで通用する地域紙幣(地域通貨)が発行されることもある。現在の多くの国では中央銀行の発行する銀行券が一般的であるが、シンガポールなど政府紙幣を発行している国もある。現在多くの先進国の中央銀行が完全な国家機関ではなく、民間企業の投資などで出来ていることから、中央銀行のありかたを疑問視する考え方が最近世界中で起きている。そのため代替案としての政府紙幣、地域通貨なども再び脚光を浴びはじめている。
現在の日本では、政府紙幣は存在しないが、日本銀行が開業するまでは政府紙幣が発行されたほか、大正時代や昭和時代には小額銀貨の代用としての銭単位の低額の政府紙幣が発行されたこともある。法令用語としての「紙幣」はもっぱら政府紙幣を指し、銀行券は含まないが、日常用語としては、日本銀行券を指して紙幣と呼ぶ。
以下、特に断りのない限り「紙幣」とは政府紙幣ではなく、銀行券を意味するものとする。
歴史
本来、貨幣は貴金属など普遍的な価値を持つ財貨そのものであり、昔から王侯がコインの鋳造権を独占して市場に流通させていた。これらの貴金属による貨幣は運搬に不便であるだけでなく、摩耗による減価の問題もあったため、次第に貴金属との交換を保証された債務証書(手形)に置き換わっていった。これが紙幣のはじまりといえる。
紙幣(および紙が発明される)に先立って、古代エジプトにおいて倉庫への穀物の預かり証(パピルス製)が通貨の代わりとして使用されたことが記録されている。また古代カルタゴでは革製の通貨が存在したとされている。ただしこれらはローマによる征服とともに断絶した上、考古学的に証拠となる実物が発掘されていないため、実態は不明である。
世界初の紙幣は、宋代に鉄銭の預り証として発行された交子である。交子には有効期限があり、期限前に新札との交換は可能だが手数料がかかった。宋ののちの元が発行した交鈔は、当初から通貨として発行された初の紙幣となった。歴史上最大の紙幣は明の宝鈔であり、サイズは縦338ミリ・横220ミリとなる。
兌換紙幣
1900年に発行された日本の紙幣。兌換紙幣であり、金と交換可能なことが明記されている。
近代になって、金本位制(または銀本位制)が確立し、本位貨幣たる金貨や銀貨または銀行に保管する金地金などと交換ができる紙幣は兌換紙幣(だかんしへい)と呼ばれ、券面にはそれらの記載があった。例えば、アメリカでは、ブルーシールの兌換銀券とイエローシールの兌換金券があった。
日本の兌換紙幣は最初は兌換銀券(紙幣の表題は「日本銀行兌換銀券」)であったが、1897年(明治30年)に金本位制が採用されてからは、兌換金券(紙幣の表題は「日本銀行兌換券」)となった。紙幣が広く流通するためには兌換が保証されていることが重要であって、銀行など紙幣発行機関の信用がその存立基盤を形成していた。すなわち特定の銀行に正貨(つまり金銀)の準備がないという流言が広まれば、途端に信用不安を引き起こし、取り付け騒ぎが起こって銀行券が紙切れになる危険が生じたわけである。
しかし、1929年の世界恐慌以降、財政・金融政策が困難になるなどの理由から各国で金本位制を廃止し、管理通貨制度へ移行、多くの国の紙幣は兌換紙幣から正貨との交換が出来ない不換紙幣となった。普遍的な財貨である金銀との交換価値が失われた紙幣は、時に政府による濫発や中央銀行による国債大量引き受けなどで、ハイパーインフレーションを引き起こしたが、中央銀行による不断の通貨安定政策により一定の信頼を得て、中心的な法貨として国民生活に広く流通している。
現在では本位金貨・本位銀貨・金地金などと交換できる兌換紙幣を発行している国家はなくなったが、ただ中国語では「兌換」の語は現在「両替」の意味で使われている。
日本紙幣の歴史的な流れと主な出来事
<紙幣の起源と初期の紙幣>
・楮幣(ちょへい)(1334年、建武元年)
後醍醐天皇が内裏造営資金のために発行したとされるが、現物は現存せず、実際に流通したかも不明。
・山田羽書(1623年、元和9年)
伊勢国山田の商人が発行。現存する最古の紙幣。
<江戸時代の紙幣>
・藩札(はんさつ)
各藩が財政難の解決策として発行。最初は福井藩が1661年(寛文元年)に発行したものとされる。
その他、旗本、幕府、公家、寺社、町村などが発行した多様な紙幣が存在。
藩札や私人札は主に地域限定で流通し、全国的な貨幣としての強制力は持たなかった。
<明治時代の紙幣>
・戊辰戦争後の太政官札
明治政府が戦費や殖産興業の資金確保のため発行。貨幣制度の未整備で混乱を招いた。
・明治通宝(1872年)
大蔵省が発行。旧紙幣を回収・統合し、貨幣制度を整備。
<国立銀行と銀行券>
1873年(明治6年):第一国立銀行(現みずほ銀行)が設立され、以後153の国立銀行が銀行券を発行。
銀行券は1882年(明治15年)に設立された日本銀行の独占発行へ移行。
・金本位制(1897年、明治30年)
貨幣法により採用され、安定的な通貨制度を確立。
1932年(昭和7年)、金輸出禁止により管理通貨制度へ移行。
<戦後の紙幣改革と現在まで>
・A券からD券
戦後、金融緊急措置令によりA券(6種類の紙幣)が発行され、その後B券、C券、D券が続く。
・二千円券(2000年、平成12年)
偽造防止技術を導入し新たに発行。しかし流通は限定的。
・E券(2004年、平成16年)
一万円券・五千円券・千円券の新デザイン。高い偽造防止技術を採用。
・F券(2019年発表、2024年発行開始)
一万円券(渋沢栄一)、五千円券(津田梅子)、千円券(北里柴三郎)の新デザインが採用。
2024年7月3日より正式に流通開始。
日本の紙幣の歴史は、経済の発展と社会的な変革を反映しています。近代では、偽造防止技術の進化やデザインの刷新が通貨の安全性と信頼性を高め、経済基盤の安定化に寄与しています。
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お札を新しくする目的は?
お札を新しくする目的
偽造対策の強化とユニバーサルデザインの向上です。新しいお札では、より偽造しにくいように新しい偽造防止技術を採用したほか、誰にでも使いやすいお札を目指し様々な工夫が施されています。
・偽造対策
新しいお札には、主に「すき入れ」(すかし)と「ホログラム」に最新の偽造防止技術を採用しています。
・高精細すき入れの採用
「すき入れ」は「すかし」ともいわれますが、お札を光にかざすと肖像などが浮かび上がる技術です。今までのお札のすき入れは肖像のみですが、新しいお札では肖像の背景に小さな菱形の模様が連続的に入っています。この菱形の模様は「高精細すき入れ」といい、とても細かい線で構成しているため偽造をより困難なものにします。
・3Dホログラムの採用
「ホログラム」は今までの一万円札と五千円札にも採用されており、金属光沢があり、角度を変えることで違った模様が見える技術です。コピー機やプリンターなどでお札を印刷しても、このホログラムの特性が失われるため、偽造防止に有効です。新しいお札では、立体的な肖像が左右に回転するデザインの「3Dホログラム」を採用し、一万円札、五千円札、千円札の3種類全てに貼ってあります。この技術が導入されたお札は、世界初となります。
ユニバーサルデザインの向上
新しいお札は、年齢や国籍、障害の有無にかかわらず、誰もが使いやすいようにユニバーサルデザインが更に工夫され、今までのお札から、主に次の4点を変更しています。
・識別マークの配置や形状の変更
識別マークとは、指で触ってお札の違いを識別できるよう、インキを高く盛り上げる特殊な印刷方法によりお札の表面にざらつきを作っているものです。今まではお札の種類ごとに異なる形をしていましたが、新しいお札では、11本の斜線に統一しました。その上で、今まではどのお札でも表面の左下と右下に配置していたものを、新しいお札では種類ごとに配置を変えることで、識別しやすいように変更しています。
<一万円札>
11本の斜線の識別マークがお札の左右の中央にあります。
<五千円札>
上下の中央付近にありますが、お札はよく二つ折りされるので、折ったことで識別マークが分かりにくくならないよう、上にある識別マークは少し右に、下にある識別マークは少し左にずらしています。
<千円札>
右上と左下の対角上にあります。
・すき入れの位置の変更
今まではどのお札でも中央にすき入れがありましたが、新しいお札では五千円札のすき入れの位置を表面から見て左側に変更しました。一万円札と千円札のすき入れは今までと同じ中央です。すき入れの部分には印刷がないため、触ると紙本来の感触があります。面積も大きいので、この感触の違いが識別ポイントになります。
・ホログラムの形状の変更
ホログラムは、触るとつるつるしているので、これが識別ポイントになります。新しいお札では、ホログラムの形状を変更しています。具体的には、新しい一万円札と五千円札には、お札を横長に持ったとき、上から下までつながるように幅12mmの細長いホログラムが貼ってあります。一万円札は左寄りに、五千円札はやや中央寄りに配置しています。今までの千円札にはホログラムがありませんでしたが、新しい千円札には、幅24mmの四角形のホログラムが表面左下に貼ってあります。
・額面数字の拡大など
額面の「10000」や「5000」といったアラビア数字が、今までのお札と比べて表面では2倍から3倍、裏面では5倍ほど大きくなりました。また、お札の色味については、一万円札の茶色、五千円札の紫色、千円札の青色といった今までのお札の色味をベースとしつつも、新しい千円札の中央部分に橙色を配置しグラデーションをつけることで、五千円札と千円札との見え方が異なるように工夫しています。
お札を識別できるアプリがあります
お札を製造する国立印刷局では、目の不自由なかたのために、スマートフォンアプリのお札識別アプリ「言う(いう)吉(きち)くん」を無料配信しています。これは、アプリを起動してカメラにお札をかざすと、お札の種類を識別し、音声と文字で知らせるものです。令和6年(2024年)4月1日に新しいお札に対応したアプリをリリースしています。
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まとめ
私たちの生活と密接に関わりがあるお札が、より偽造しにくく、より識別しやすいものに生まれ変わりました。また、これまでのお札も引き続き使用できますので、「これまでのお札が使えなくなる」などといった詐欺行為には十分に注意していきたいものです。
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