年金には「老齢年金」と「障害年金」の2種類があり、どちらを受給するのが有利なのか迷う人も多い でしょう。老齢年金は 一定の年齢に達した人が受け取る年金 であり、障害年金は 病気やケガで生活が困難になった人が受け取る年金 です。しかし、どちらも満額で同時に受給することはできず、選択が必要になる場合があります。
この記事では、受給額・条件・手続きの違いを比較し、どちらを選ぶべきかの判断基準を詳しく解説 します。老後の生活設計や、万が一の際の生活支援のために、自分にとって最適な年金制度を理解しましょう。
老齢年金と障害年金の基本的な違いとは?
年金には 老齢年金 と 障害年金 があります。どちらも生活を支える制度ですが、目的や受給条件 が異なります。以下のポイントで違いを整理してみましょう。
目的の違い
🔹 老齢年金 → 高齢になった人の生活を支える年金
🔹 障害年金 → 病気やケガで働くことが難しくなった人を支える年金
老齢年金は 65歳以上の人 に支給されますが、障害年金は 年齢に関係なく 受け取ることができます。
受給資格の違い
🔹 老齢年金 → 最低10年間の年金保険料の納付が必要
🔹 障害年金 → 初診日の時点で一定の納付要件を満たしていることが必要
例えば、老齢年金は 長期間納めていればOK ですが、障害年金は 病気やケガをした時点で納付要件を満たしていないと受け取れません。
受給額の違い
🔹 老齢年金 → 納めた保険料や加入期間によって決まる
🔹 障害年金 → 障害の等級(1級・2級・3級)と加入制度(国民年金・厚生年金)で決まる
老齢年金は 払った分が反映される 仕組みですが、障害年金は 障害の重さ によって金額が変わります。
併給の可否
🔹 両方を満額同時に受給することはできない
🔹 どちらか有利な方を選ぶ必要がある
ただし、条件によっては 一部の年金を併給 できるケースもあります。
このように、老齢年金と障害年金は 目的・受給条件・金額の決まり方 が異なります。自分の状況に合った選択をすることが重要です。
受給額の違い|どちらが有利なのか?
老齢年金と障害年金では、受給額の計算方法や支給の仕組み が大きく異なります。どちらを選んだ方が有利なのかを判断するために、具体的な違いを見ていきましょう。
老齢年金の受給額|納付期間がカギ
🔹 国民年金(基礎年金):満額で 年間約80万円(2024年度)
🔹 厚生年金:収入に応じた報酬比例部分が加算
例えば、会社員として 40年間しっかり保険料を納めた人 は、老齢基礎年金に加えて厚生年金部分が加わるため、月額10万円以上 になるケースもあります。
障害年金の受給額|障害の等級で決まる
🔹 障害基礎年金(国民年金)
1級:約99万円+子の加算
2級:約79万円+子の加算
🔹 障害厚生年金(厚生年金)
1級:報酬比例額 × 1.25倍 + 約99万円
2級:報酬比例額 + 約79万円
3級:報酬比例額のみ
厚生年金に加入していた場合、現役時代の給与が高いほど受給額も増える ため、障害厚生年金の方が手厚くなります。
どちらが有利か?ケース別に比較
✅ 長く働いていた人(厚生年金加入が長い)
→ 老齢年金の方が有利 になりやすい
(納付期間が長い分、受給額も増える)
✅ 障害等級が高い人(1級・2級)
→ 障害年金の方が有利 になる可能性あり
(障害基礎年金+厚生年金部分があるため、老齢年金より多くなることも)
✅ 納付期間が短い人(10年未満の加入)
→ 老齢年金は受け取れないが、障害年金は受給できる可能性あり
(初診日の納付要件を満たしていれば、障害年金は受給可)
✅ 働きながら年金を受給したい人
→ 障害年金は一定の条件下で働きながら受給可能
(老齢年金は60歳以降の働き方によって減額の可能性がある)
受給額の変動要因
🔹 老齢年金は受給開始時期で増減
・60歳から繰り上げると 最大30%減額
・70歳まで繰り下げると 最大42%増額
🔹 障害年金は定期的な審査あり
・症状が改善すると減額・支給停止の可能性
・逆に悪化すると等級が上がり増額の可能性
このように、受給額だけでなく 長期的な視点 で考えることが重要です。
受給条件の比較|どちらを選ぶべきかの判断基準
老齢年金と障害年金は、それぞれ異なる条件を満たす必要があります。どちらを受け取れるのか、判断基準を整理してみましょう。
老齢年金の受給条件|年齢と納付期間が必要
🔹 受給開始年齢:原則 65歳(繰上げ・繰下げ可能)
🔹 納付期間の条件:10年以上の年金保険料納付が必要
65歳以上で、最低10年間の納付があれば受給可能。ただし、未納期間が多いと受給資格を失うことがあります。繰上げ受給すると支給額が減るため、受給開始のタイミングも考慮が必要です。
障害年金の受給条件|障害の程度と初診日がカギ
🔹 対象:障害等級 1級・2級(国民年金)/1級・2級・3級(厚生年金)
🔹 納付要件:初診日の時点で一定の保険料を納めていること
病気やケガによって働くことが難しい場合でも、初診日時点で納付要件を満たしていなければ受給できない。また、障害等級によって受給額が異なるため、申請時の診断書の内容が重要になります。
どちらを選ぶべきか?ケース別の判断基準
✅ 65歳以上の人
→ 老齢年金を選ぶ(障害年金は65歳以降の新規申請不可)
✅ 障害等級が1級・2級で、日常生活に支障がある人
→ 障害年金の方が支給額が多くなる可能性あり
✅ 納付期間が10年未満の人
→ 老齢年金は受給不可だが、障害年金は要件を満たせば受給可能
✅ 若くして病気やケガで収入が途絶えた人
→ 障害年金を申請(老齢年金は受給できる年齢まで待つ必要がある)
障害年金は更新・再審査がある
🔹 症状が改善すれば支給停止の可能性あり
🔹 逆に悪化すれば等級が上がり支給額が増えることも
障害年金は定期的な審査があり、状態が良くなると支給が打ち切られることがあります。一方、老齢年金は一度受給資格を得れば、生涯にわたって受給可能です。そのため、安定した収入を確保したい場合は、どちらが自分にとって有利か慎重に判断する必要があります。
申請手続きの流れ|老齢年金と障害年金の手続き方法
老齢年金と障害年金を受給するためには、それぞれ決められた手続きが必要です。手続きをスムーズに進めるために、申請の流れを確認しておきましょう。
老齢年金の申請手続き|年齢になったら自分で申請
🔹 申請時期:原則 65歳の誕生日の3か月前から 申請可能
🔹 申請場所:住んでいる地域の 年金事務所または市区町村役場
手続きの流れ
1️⃣ 年金請求書が届く(誕生月の3か月前)
2️⃣ 必要書類を準備する(年金手帳、本人確認書類、振込先口座など)
3️⃣ 年金事務所または役所の窓口で申請
4️⃣ 審査後、受給開始(申請から約1〜2か月後)
申請が遅れると、その分受給開始も遅れるため、誕生月の3か月前に届く案内を見逃さず、早めに手続きを行うことが重要です。
障害年金の申請手続き|診断書と初診日の確認が重要
🔹 申請時期:障害状態になり 1年6か月経過後 から申請可能(例外あり)
🔹 申請場所:年金事務所または市区町村役場
手続きの流れ
1️⃣ 初診日を証明する書類を取得(カルテや診療記録)
2️⃣ 医師に診断書を作成してもらう(障害の状態を正確に記載)
3️⃣ 必要書類を準備する(年金手帳、住民票、所得証明など)
4️⃣ 年金事務所で申請手続き
5️⃣ 審査後、支給決定(審査に数か月かかる)
特に「初診日の証明が取れないと申請できない」ため、通院した病院が分からない場合は、早めに調べておくことが大切です。
老齢年金と障害年金の手続きの違い
🔹 老齢年金 は、65歳になると年金請求書が届くため、比較的スムーズに手続きが可能。
🔹 障害年金 は、自分で初診日を証明し、医師の診断書を用意する必要があるため、手続きが複雑になりやすい。
老齢年金は、納付期間が基準を満たしていれば受給が確実ですが、障害年金は審査の結果によって受給できない場合もあるため、事前に準備をしっかり行うことが重要です。
併給・切り替えは可能?ベストな選択を考える
老齢年金と障害年金は、どちらも生活を支える制度ですが、両方を同時に満額受け取ることはできません。しかし、一部のケースでは併給や切り替えが可能です。どのような選択肢があるのか、詳しく見ていきましょう。
併給できるケース|一部併給が可能な場合がある
老齢年金と障害年金は、原則としてどちらか一方を選択する必要があります。ただし、以下の条件を満たす場合は、一部の年金を併給できます。
🔹 障害基礎年金+老齢厚生年金(併給可能)
🔹 障害厚生年金+老齢基礎年金(併給不可)
例えば、障害基礎年金(国民年金)を受給しながら、老齢厚生年金(厚生年金)を受け取ることは可能 です。しかし、障害厚生年金を受給している場合、老齢基礎年金は受け取れません。
切り替えが必要なケース|65歳到達時の選択
障害年金を受給している人が 65歳になると、老齢年金との比較を行い、どちらを選択するか決める必要があります。
📌 切り替え時のポイント
1️⃣ 障害年金の方が金額が多い場合 → そのまま障害年金を受給
2️⃣ 老齢年金の方が金額が多い場合 → 老齢年金に切り替え
例えば、障害年金の金額が老齢年金よりも多い場合は、そのまま障害年金を受給し続ける方が有利です。しかし、障害状態が軽減し、今後支給停止の可能性がある場合は、老齢年金への切り替えを検討するのも選択肢 です。
どちらを選ぶべきか?ケース別の判断基準
✅ 障害等級が1級・2級の人
→ 障害年金の方が支給額が多くなる可能性が高い
✅ 厚生年金に長期間加入していた人
→ 老齢厚生年金の方が受給額が増えるケースもあるため要確認
✅ 障害の状態が改善し、今後の支給継続が不安な人
→ 老齢年金へ切り替えを検討するのも選択肢
✅ 老齢基礎年金のみの受給資格がある人
→ 障害基礎年金を受給しながら老齢厚生年金を併給できる可能性あり
切り替えや併給の注意点
🔹 障害年金は継続審査があるため、将来的に支給停止の可能性がある
🔹 老齢年金は一度受給開始すれば、原則として一生涯支給される
🔹 障害年金を選んだ後に老齢年金へ変更することは可能だが、その逆はできない
そのため、「将来的な安定性」を考えて選ぶことが重要です。今後の収入や生活状況を踏まえ、どちらを選ぶのが最も有利か慎重に判断 しましょう。
結論
老齢年金と障害年金は、それぞれ受給の目的や条件、支給額の計算方法が異なるため、どちらを選ぶかは個人の状況によります。
✅ 障害等級が高く、働くことが難しい人 は、障害年金の方が受給額が多くなる可能性が高い
✅ 厚生年金に長期間加入し、収入が高かった人 は、老齢年金の方が有利になることがある
✅ 65歳を迎えたときに障害年金を受給している人 は、どちらが有利か比較し、切り替えを検討する必要がある
また、障害年金は定期的な審査があるため、将来的に支給が停止されるリスクも考慮しなければなりません。一方で、老齢年金は 一度受給開始すれば生涯受け取れる ため、安定した収入を確保するには適しています。最も重要なのは、自分の現在の状況と将来の生活を考慮し、どちらが適しているかを慎重に判断すること です。年金事務所や専門家に相談しながら、最適な選択をしましょう。