ファイナンシャル・プランニング
人生の夢や目標をかなえるために総合的な資金計画を立て、経済的な側面から実現に導く方法を「ファイナンシャル・プランニング」といいます。ファイナンシャル・プランニングには、家計にかかわる金融、税制、不動産、住宅ローン、保険、教育資金、年金制度など幅広い知識が必要になります。これらの知識を備え、相談者の夢や目標がかなうように一緒に考え、サポートする専門家が、FP(ファイナンシャル・プランナー)です。
FPは、「暮らしとお金」に関する幅広い相談に対応します
FPは、相談者の夢や目標を達成するために、ライフスタイルや価値観、経済環境を踏まえながら、家族状況、収入と支出の内容、資産、負債、保険など、あらゆるデータを集めて、現状を分析します。
そして、相談者の立場や、ライフイベントを考慮したうえで、長期的かつ総合的な視点でさまざまなアドバイスや資産設計を行い、併せてその実行を援助します。
また、必要に応じて、弁護士や税理士、社会保険労務士、保険・不動産の専門家、銀行・証券会社などの各分野の専門家のネットワークを活かしながらファイナンシャル・プランニングを行います。
日本での沿革
1986年 : ファイナンシャル・プランナー(以下:FP)の民間資格を認定するダイヤモンドファイナンシャル・プランナーズが設立され、AFP資格の発行を開始する。
1988年 : 日本初のFPに関する公的資格「金融渉外技能審査」(通称:金財FP 労働省の技能審査認定制度に基づく)を実施することとなる社団法人金融財政事情研究会(以下:金財)がFPセンターを設立
1993年 : 任意団体である日本FP協会(現在の特定非営利活動法人日本ファイナンシャル・プランナーズ協会の前身。以下:協会)が民間資格であるCFP資格の試験を開始する。
2001年 : 「金融渉外技能審査」は、技能審査ではなく職業能力開発局長が定める職業能力検定の一つとなる(金財が実施)[1]。協会はNPO法人の認証を受ける。
2002年 : 職業能力開発局長が定める職業能力検定から金融渉外技能審査が外れる(2002年11月21日付)。技能検定にファイナンシャル・プランニング職種が追加され、合格者はファイナンシャル・プランニング技能士とよばれるようになった。
日本において、FPとしての能力を有している者として認められている国家資格は、1~3級ファイナンシャル・プランニング技能士である。
また現在の試験制度が整う以前の沿革が複雑であり、現在の試験の前身となる民間資格・公的資格、金融業・保険業の業界団体が実施する類似の資格などが多数存在しているものの、現在「ファイナンシャル・プランナー」と称する者は下記の資格を有している事がほとんどである。
技能検定
1~3級ファイナンシャル・プランニング技能士
公的資格として金財が実施していた金融渉外技能審査(通称:きんざいFP)は行政改革の流れのなかで2001年に廃止され、技能検定に統合されたが移行特例による認定研修を受講し修了した者は、同一等級のファイナンシャル・プランニング技能士となった。日本FP協会と金財が実施している。
非技能検定
CFP認定者(日本では米国CFPボードと提携する日本FP協会)、AFP認定者(日本FP協会)による。AFP・CFPは協会が認定する民間資格であるため個別の法律に規定される名称独占資格ではない。但しその名称は協会が「商標登録」しており、協会による認定者以外がその名称を使用すると商標法違反に問われる事となり、信頼性が担保される事となる。
AFP認定者となる資格を取得するには、AFP資格審査(ファイナンシャル・プランニング技能検定試験試験2級)の合格・AFP認定研修の修了・日本FP協会に入会することが要件となっている。これら順序は問わないが、AFP資格審査試験合格の有効期限は合格の日の年の翌々年度末まで。
AFP資格審査試験 は運用上2級ファイナンシャル・プランニング技能検定であり、協会・金財いずれの試験もAFP資格審査試験としての効力を有する。
公認会計士および税理士はAFP認定研修(税理士課程)を修了することによりAFP資格を得る。
CFP認定者資格を取得するには、CFP資格審査試験に合格し、CFPエントリー研修を修了すること。そして、試験合格前10年から合格後5年の間に3年以上の実務経験を満たし、CFP約定書を提出することが要件となっている。CFP資格審査試験合格の有効期限は、合格日から5年以内。
1級ファイナンシャル・プランニング技能検定試験はCFP資格審査試験を兼ねないが、CFP認定者は1級ファイナンシャル・プランニング技能検定試験のうち学科試験を免除され、実技試験に合格することにより、1級ファイナンシャル・プランニング技能士となれる。
協会はAFP認定者・CFP認定者に、それぞれ2年ごとの資格更新を定めている。2年間にAFP認定者はFP実務と倫理を含む最低3科目以上で15単位以上、CFP認定者はFP実務と倫理を含む最低3科目以上で30単位以上の継続教育を義務付け、資格更新要件としている。
よってAFP認定者及びCFP認定者は協会会員であり、継続教育により常に新しい業務関連知識を得ている者である。
また協会会員の義務としての年会費及び継続教育講習の受講費を各教育機関に納入するため、資格維持のため一定の費用負担が必要となる。
金財もファイナンシャル・プランニング技能士センターを設置し、ファイナンシャル・プランニング技能士に対して継続教育の機会を与えている。正会員については、2年間に1級は20ポイント・2級は15ポイント・3級は10ポイントの継続教育を義務付けている。
よってファイナンシャル・プランニング技能士センター会員及びFP協会の会員は共に、教育機関は異なるものの明確な基準のある継続教育により常に新しい業務知識を得ている者であり、その信頼性が担保されている。
但し、ファイナンシャル・プランニング技能士センターへの入会は任意であると共に、ファイナンシャル・プランニング技能検定合格者が継続教育を受けない場合においても資格を剥奪される事は無く、またファイナンシャル・プランニング技能士を称することを禁じられる事は無い。
職業・職種として
企業系FP
所属:金融機関(銀行、証券会社、保険会社など)、会計事務所、不動産会社など。
業務内容:自社が取り扱う金融商品・保険商品・不動産の販売。
資産運用設計(近年一部有料化の動きも)。
特徴:収益源は主に金融商品の販売手数料。
FP資格を持つ営業社員が多いが、相談業務は無料である場合が多い。
社員教育や人事評価の一環でCFPや1級ファイナンシャル・プランニング技能士の取得を奨励する企業も多い。
独立系FP
所属:自営・独立事務所を設立。
業務内容:相談料、会員契約、執筆活動、セミナー講師などの収益。
実態としては「保険代理店」として保険商品の代理店報酬を主な収入源とするケースが多数。
投資教育や住宅ローン相談など、特定分野に特化したコンサルティングも行う。
特徴:公認会計士、税理士、社会保険労務士、行政書士など、士業資格との組み合わせで専門性を高める場合が多い。
IFA(独立系金融アドバイザー)契約を結ぶことで証券や保険商品の販売手数料も得られる。
企業内FP
所属:一般企業(金融機関以外)。
業務内容:社内従業員向けにFP業務を提供。
福利厚生や社内資産運用サポートが主な役割。
特徴:企業福利厚生の一環としての役割が増加傾向。
職業としての特徴と課題
資格に対する多様な考え方:上級資格(1級技能士、CFP)を保有しなくても経験や提案力で独立するFPが多い。
資格維持費(年会費、更新料)が必要な民間資格を解除し、国家資格のみを活用するケースも。
ビジネスモデルの未成熟:独立系FPのビジネスモデルは確立途上。
職業としての歴史が浅い分、手探りの部分が多いが、多大な可能性を秘めた分野。
非資格者の活動:資格非保有者でもFPと同等の活動(メディア出演や経済評論)を行う例が多い。
今後の展望:FP業務を専門職として確立するための取り組みや、資格の信頼性向上が求められる。
またファイナンシャル・プランニング業務を法律上独占する専門資格は無いため、CFP認定者・AFP認定者及びファイナンシャル・プランニング技能士の資格を有していない者がファイナンシャル・プランナーという職種名を称して業務を行う場合、法律上の問題は生じない。類似の資格としては、銀行業務検定協会が主催するFA(ファイナンシャルアドバイザー)、AFA(アシスタントファイナンシャルアドバイザー)や、生命保険協会認定FPのTLC(トータルライフコンサルタント)などが存在する。
職業倫理
FPが守るべき職業倫理として次のようなものがあるとされている。
顧客利益の優先
顧客の利益を無視して自分の利益を優先させるようなプランニングを行ってはならない。FPは「顧客の利益を最優先することにより顧客より報酬を得る者」と定義されており、特定の会社の金融商品のみを顧客に紹介してはならない。
顧客に適した商品でなく自分が手にする手数料の高い商品を勧めるFPもいるが、この行為はFPの倫理規定に違反し許され得ない。
守秘義務の原則
知りえた顧客情報を外部に漏らしてはならない。ファイナンシャル・プランナーには法律上の罰則付き守秘義務はないものの、顧客のプライバシーにかかる情報を知りうる立場である職種のため、職業倫理としてこれを守る必要がある。
特に協会会員であるCFP認定者は、その規定により違反した場合には懲戒処分が課せられる守秘義務(令状等法的根拠による場合を除く)を有している。
説明義務(アカウンタビリティ)
FPは顧客の適切な意思決定のために、十分顧客に対して説明しなければならない。
顧客の同意(インフォームド・コンセント)
FPは顧客に説明するとき、顧客の理解度を確かめながら進めていかなければならない。
業務制約
FPとしての相談業務は個人の資産に対する見直しやライフプランニングの提案という観点から、時に各士業の職域ボーダー線に近い立ち位置で業務を行うことが多く、FPとしての職分を弁えた行動を取ることが求められる。例えば、一般論を踏み越えた個別事情の法律相談は弁護士、税務相談は有償無償を問わず税理士の独占業務であり、一般論以上の法律・税務相談は弁護士法・税理士法に抵触するので一歩踏み込んだ対応を行う事ができない。
逆説的に、これら接近する各業法の制約がFPの業務の制約であり、より内容の濃いコンサルティングへと繋げるためには各士業者とのコネクションを確立するなどの業務遂行上の工夫が求められ