保険ってなんだろう
保険の意義
保険は、日常生活で起こる様々なリスク(危険)に備える制度です。
病気やケガ、死亡、事故などの不測の出来事、火災、台風や地震などの自然災害、第三者への損害賠償責任の負担や事業で被る不利益など、リスクをあげればきりがありません。
しかし、このようなリスクに個人の力だけで対処するのは困難なことも少なくありません。そこで、同じように不安を感じている人々から一定の保険料を集めて、万が一の事態に備えようとするのが保険です。そして、被害に遭ってしまった場合は、その集まった資金の中から保険金を受け取ることができる制度なのです。
このような、「万人は一人のために、一人は万人のために」という相互扶助のシステムのもとで人々のリスクを軽減すること。これが保険制度のあらましであり、社会的な役割なのです。
保険の特徴
保険以外でも、リスクに備えるための手段はいくつかあります。たとえば貯蓄はその1つの方法です。しかし、貯蓄は万が一損害(経済的損失)を被った場合、貯蓄額の範囲内でしか対応できません。一方、保険は多数の人々が保険料を出しあって相互に補償しあう制度です。したがって、万一の事態に相当する補償額を得ることができるのです。このような事情から「貯蓄は三角、保険は四角」といわれます。
保険と共済とはどこが違うの?
不特定多数の人々を対象にしている保険に対し、共済は特定の地域や職業、公共団体の会員などで限定された人々を対象としています。
保険とデリバティブとはどこが違うの?
損害保険では実損害額を超えては支払われないのに対し、デリバティブでは実際の損害額に関わりなく、予め約定した金額が支払われます。また、損害保険には損害の査定が必要ですが、デリバティブは条件となる事柄が発生すると比較的短期間で支払われます。
保険と投資信託とはどこが違うの?
保険は、不測の事故などによって生じた損害(経済的損失)を補償するための制度で、契約時に保険金額を確定します。投資信託は、資金を投資・運用することにより利益を上げようとする制度で、運用実績によりリターンが変動します。
「保証」「保障」「補償」の違いって?
保険に関連する用語としてよく使用される「保証」「保障」「補償」という単語。すべて「ホショウ」と読みますが、これらはどのように使い分けられているのでしょうか。
主に年金保険で使われる「保証」
「保証」の意味は、間違いがないと約束し、責任を持つことです。これは、年金保険でよく使われます。
年金保険(個人年金保険)とは、保険の契約時に定めた年齢まで保険料を払い込んだ後、一定期間(もしくは一生涯)給付が受け取れる貯蓄型の保険です。国民年金や厚生年金といった公的年金とは異なり、自分で保険会社に契約を申し込むタイプの年金で、主にリタイア後の資金として活用されます。
主に生命保険で使われる「保障」
「保障」には、権利などを保護し、脅威に脅かされることなく安定した状態を保全するという意味があります。これは、生命保険でよく用いられます。
生命保険とは、生命に関わる事態を「保障」するものです。被保険者が亡くなった場合の死亡保障に加え、病気やケガをしたときの医療保障、要介護になった場合の介護保障などを含むこともあります。
生命保険に加入していれば、予期せぬ事態に遭遇した場合にまとまった金額を受け取ることができ、家族の生活を守ることができます。
このように、死亡などの不測の事態に備え、自分や家族を経済的な脅威から守って生活を保全するという意味で「保障」が使われます。
主に損害保険で使われる「補償」
「補償」には、損害が生じたときにそれを補填し、埋め合わせるという意味があります。そのため、損害保険でよく使われる用語です。
損害保険とは、偶然のリスクによって生じた損害をカバーするための保険です。個人向けの損害保険には、自動車保険や火災保険、地震保険、傷害保険などがあります。また、法人向けの損害保険には、企業財産の保険や賠償責任の保険、船舶・貨物・運送に関する保険などがあります。
一定額の保険金が保障される生命保険とは異なり、損害保険では損害額によって補償される金額が変わる「実損払方式」が中心になっています。このように、生じた損害を埋め合わせるという意味で「補償」が使われるのです。
保険料は、どうやって決める?
保険料を決める際には、まず過去に起きた膨大な数の事故や災害のデータを分析します。交通事故や火災、あるいは水害や落雷などは、どれくらいの確率で起きるのか。一つひとつはバラバラに発生しており予測は不可能ですが、データの数が増えると、たとえば一台の車が一年間に事故を起こす確率が統計的に計算できます。
これを「大数の法則」といって、分析するデータの数が増えるほど、確率は一定の数字に近づいていくのです。
さらに分析を進めると、事故や災害の発生確率はさまざまな条件によって違うことがわかります。
たとえば交通事故を起こす確率は、年齢によって違います。また走行距離の長い人ほど、当然、事故に遭う確率も高くなります。免許を取ったばかりで初めて車を買った人と、何年も無事故のゴールド免許ドライバーの保険料が同じでは、明らかに不公平ですよね。そこで事故の確率の高い人には高い保険料を、低い人には低い保険料を設定します。またエアバッグなど安全対策が充実している車ほど、事故の際に乗っている人へのダメージは少なくなりますので、車種によっても保険料は変わります。
これを「公平の原則」といいます。木造住宅よりもコンクリート住宅のほうが火災保険料は安いですし、耐震等級の高いビルのほうが低いビルよりも地震保険料は安くなります。当然ですよね。
さらに、契約者の皆さんから集めた保険料と、保険会社が支払う保険金の総額が等しくなるように計算します。これを「収支相等の原則」といいます。
このように、保険料は綿密な計算とルールによって、適正な金額に決められているのです。
契約期間中にすべきことは?
せっかく契約した損害保険も、きちんと“メンテナンス”しないと、いざというときに十分な効力を発揮できない場合があります。
いちばん重要なのは、契約内容に変更があった場合の申請です。
たとえば、【自動車保険】契約期間中に自動車を買い替えたり、契約の年齢条件に満たないお子様が運転するようになった場合。
契約期間中に契約内容を変更する場合には、追加の保険料が必要になったり、逆に保険料の一部が返還されたりすることがあります。
たとえば多くの自動車保険では、運転者を家族に限ったり運転者の年齢を限定することで、保険料を割引しています。「30歳以上限定」で契約していて、18歳になったお子様が免許を取って運転するようになった場合、割引対象外となりますので、追加の保険料が必要になります。
逆に、たとえば大型車から軽自動車に車を買い替えた場合は、保険料が下がるケースが多く、残りの契約期間に応じて保険料の一部が返還されます。
また、契約期間の途中で解約のお申し出があった場合も、残りの契約期間に応じて保険料が返還されます。
そして、忘れてならないのは、満期日と継続手続きです。
保険の契約期間は多くの場合1年間ですが、1年超の契約や1年未満の契約もあります。保険会社では、ほとんどの場合、満期の到来前に封書などで通知を行っています。うっかり満期を忘れて継続手続きを怠ると、原則ほんの1日を過ぎていても補償はされません。
保険を最大限に生かせるよう加入時だけでなく、契約期間中のメンテナンスもご注意ください。
保険金の請求と支払い
万一、事故や災害が起こった場合、どうしても動揺してしまいがちです。いざというときにどうしたらよいか、この機会に頭の中でシミュレーションしておきましょう。
■事故が起きたら、まず人命救護と警察・消防への連絡を
交通事故や盗難、火災などの事故が発生した場合には、損害保険会社への連絡の前に、ケガ人の救護や警察署や消防署などへの事故の届け出を行ってください。
保険金の請求には、原則として事故の証明書が必要となりますので、どんな軽微な事故でも必ず届け出をお願いします。特に交通事故における人身事故の場合には、「人身事故」として警察署に届け出ることが必須です。
■相手の連絡先を確認し、保険会社や代理店に連絡する
その後、速やかに契約先の保険会社または代理店に連絡してください。ほとんどの保険会社では24時間365日、専門の電話番号で対応しています。万一の場合に備えて、免許証と一緒に、保険会社の電話番号や保険証券に記載された証券番号を控えておくことをお勧めします。
交通事故では、その場での示談交渉は絶対にしないでください。場合によっては高額な示談金を請求される場合があり、それを保険で負担することはできません。相手の氏名や連絡先、車両番号、可能なら目撃者の連絡先なども確認しておくと、後々役に立ちます。
■必要書類の提出を受けて、事故の調査と保険金額の査定を行います
事故の種類や内容に応じて、保険会社が必要な書類をご案内しますので、ご提出ください。なお保険証券を紛失・焼失した場合でも、契約者の氏名、住所、生年月日などを申し出ていただければ、契約内容の確認ができます。
■確定した保険金をお支払い
査定理由などを説明したうえで、保険金が支払われます。
保険の見直し、ベストなタイミングは?
自身を取り巻くリスクが変化したとき
自身を取り巻くリスクが変化したときは、保険の見直しにベストなタイミングです。
リスクが変われば自分にとって必要な補償も変わります。目的に合った補償に加入しておかなければ、いざというときに保険金が支払われない可能性もあるのです。
昨今では大規模な自然災害による家屋などへの被害がたびたび発生しています。このような傾向を考慮して、火災保険や地震保険の見直しをしてもよいかもしれません。万が一の火災や風災、水災などの日常災害から生活を守るためにも、補償内容を見直して、自分の状況に適した火災保険に加入しましょう。
ライフステージが変化したとき
ライフステージの変化に伴い新たなリスクが発生することも考えておかなければなりません。
たとえば結婚して世帯主となった場合には、万が一病気やケガで働けなくなると家計に大きなダメージを与えてしまう可能性があります。
賃貸物件から引っ越して新たに住宅ローンを組むときも、保険を見直すのにベストなタイミングの一つです。特に住宅取得直後は、住宅ローンの残債が多額になっている一方で、貯蓄がほとんど残っていないケースも少なくありません。その状況で火災や地震などにより住宅を失うと、住宅ローンの返済が滞るだけではなく、生活再建もままならなくなってしまうでしょう。住宅ローンを組んでいる人にとって、適切な保険金額で火災保険や地震保険に加入しておく重要性は高いといえます。
更新案内が来たとき
保険会社や保険代理店から更新案内が来たときも、保険を見直すのにベストなタイミングです。
保険は基本的に1年ごとに更新する仕組みになっているため、ほぼ毎年電話や手紙で契約更新の案内が行われます。
とはいえ、そもそもどんな内容で契約したのかを忘れている人も多いはず。満期案内を受け取ったタイミングは加入している補償内容を見つめ直すよいチャンスです。
契約している内容を確認せずに前年と同条件のまま更新していると、必要な補償が入っていなかったり、逆に不必要な補償に入り続けることで無駄な保険料を支払ってしまったりといったことが起こり得ます。
更新手続きと同時にプランの見直しをすれば、手間を抑えて最適な補償を備えられるでしょう。
ちなみに多くの場合、更新時には前年と比べて保険料が変化することも覚えておきましょう。また、自動更新に関する特約が付帯されている場合や、長期契約の場合、更新連絡が来る頻度は少なくなります。ご契約の保険会社や保険代理店より届く更新案内を必ず確認するようにしましょう。