老人ホームに費用はいくら必要?
お金がない場合はどうする?
親の老後資金を心配している子ども世帯は多いようです。特に老人ホームに入る場合は、多額の費用が必要になります。
老人ホームを利用する場合、費用はいくら必要なのでしょうか。また、老人ホームに入るお金がない場合、どうすればよいのでしょうか。
老人ホームの費用相場
利用する施設や介護期間によって、老人ホームの費用相場は異なります。老人ホームの費用相場と年金で支払いができるかどうかについて解説します。
施設ごとの費用相場
老人ホームは、大きく分けると「公的施設」と「民間施設」に分けられます。それぞれの費用相場を紹介します。
公的施設
公的施設は、主に地方自治体や社会福祉法人などが運営している老人ホームです。民間施設よりも費用がかからないため、人気があり入所の順番待ちをしている方がたくさんいます。
民間施設
民間施設は、民間企業が運営している老人ホームのことです。各施設によって、さまざまな特色があり、立地がよいところやサービスが充実している施設は費用が高額になる傾向にあります。
介護期間から考える老人ホームの費用
利用する施設によって異なりますが、一般的に介護施設の平均入所期間は3年〜4年といわれています。
生命保険文化センターの2021年度「生命保険に関する全国実態調査」によると、老人ホームにかかる費用は以下のとおりです。
- 在宅介護の場合の月額平均:4.8万円
- 施設を利用した場合の月額平均:12.2万円
- 介護に要した一時的な費用の平均金額:74万円
- 介護を行った期間の平均期間:61.1カ月(5年1カ月)
- 介護に要した一時的な費用 1万9,000~2万
- 在宅介護(2年)の費用 4.8万円×24カ月=115.2万円
- 老人ホーム(3年)の費用 12.2万円×36カ月=439.2万円
合計 628.4万円
老人ホームや介護施設の費用形態は非常に複雑で、入居の検討を開始した方がまず不安に感じるポイントです。本記事では主要な老人ホーム・介護施設の相場価格や料金の仕組みを徹底的に解説します。
主な老人ホーム・介護施設の費用の違い
これまでご紹介した老人ホームや介護施設の費用の違いは、それぞれの施設のサービス体制によっても変わってきます。あらためて、それぞれの施設にどのような特徴があるのか、簡単にご紹介します。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームは、原則、要介護度3以上から入居可能です。入浴、食事など日常生活の介助を受けながら暮らすことができます。月額10万~15万円と比較的安価ですが、地域によっては入居待機者が多くなります。
入居時費用0円 月額費用5~15万円
介護付き有料老人ホーム
24時間介護スタッフが常駐している、要介護度5までを受け入れる介護付き有料老人ホーム。介護度別の定額を払うことで、日常生活に関わる介護サービスを受けながら生活できます。看取りまで対応するところなら、終の住処にもなりうる施設です。
入居時費用0~数千万円 月額費用15万~35万円
住宅型有料老人ホーム
必要な分だけの介護サービスを受けることができ、比較的介護度が軽くても生活しやすい住宅型有料老人ホーム。介護付き有料老人ホームと同等のサービスを提供するところもあります。
入居時費用0~数千万円 月額費用12万~30万円
グループホーム
グループホームは、65歳以上、要支援2以上の認知症を持つ方が、専門的なケアを受けながら、少人数の家庭的な雰囲気で共同生活できる介護施設です。
入居時費用0~100万円 月額費用15万~30万円
サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅は、60歳以上から入居が可能な、バリアフリー構造の賃貸住宅です。有資格者の相談員が常駐し、安否確認と生活相談サービスが受けられます。
入居時費用0~100万円 月額費用10万~30万円
介護老人保健施設
病院と自宅の中間的な位置付けの介護老人保健施設は、退院後すぐに在宅生活が難しい要介護1以上の方が入居し、在宅への復帰を目指す介護保険施設。入居期間は原則、3~6ヵ月です。
入居時費用0円 月額費用8万~14万円
ケアハウス(軽費老人ホームC型)
60歳以上で、自宅での自立した生活に不安がある方を対象とした施設がケアハウス(軽費老人ホームC型)です。低所得者の費用負担が軽いことが特徴となっています。
入居時費用0~数百万円 月額費用7万~20万円
シニア向け分譲マンション
主に自立、あるいは要支援の高齢者を対象にしたバリアフリーのシニア向け分譲マンション。家事援助サービスや温泉やプールがあるなど、サービスや共用設備はマンションによりさまざまです。
入居時費用1千万円~5千万円 月額費用7万~20万円
老人ホーム費用は親の年金で払える?
老人ホームの費用を賄えるかどうかは、親本人が厚生年金を受給している場合と、国民年金のみの場合で大きく異なります。
厚生労働省の令和3年度「厚生年金保険・国民年金事業の概況 」によると、厚生年金の平均月額は14万5,665円、国民年金は平均月額5万6,368円です。
親が会社員だった場合、厚生年金と国民年金の両方を受け取れるので月に約20万円の年金が受給できます。しかし、親が自営業など国民年金のみだった場合は、老人ホームの費用が大きく不足します。
厚生年金を受給できても、入所する施設によっては月額の費用が年金以上に高かったり、入居一時金で高額な費用がかかったりする場合があるため、注意が必要です。
親の老人ホームの費用を子どもが支払う?利用できる制度はある?
親の老人ホームの費用を、親が支払いできない場合には、子どもが負担するのでしょうか。老人ホームの費用負担や家計負担を軽減できる公的制度を紹介します。
老人ホーム費用は親が払えなければ子どもが負担
老人ホームの費用は、基本的には親が自分の年金や預金から支払うのが基本です。しかし、親のお金だけでは支払いができない場合には、子どもや親族が代わりに負担しなければいけません。
あらかじめ、老人ホームの費用はどうするか親や兄弟を含めて話し合っておくことをおすすめします。
老人ホーム費用の負担を軽減する公的制度
老人ホーム費用の負担を少しでも軽減できる公的制度を2つ紹介します。
特定入居者介護サービス費
特定入居者介護サービス費とは、所得や資産が一定基準以下の場合、介護施設を利用したときにかかる食費と居住費を軽減できる制度です。所得額、利用する施設や部屋の種類によって限度額が異なります。各市区町村の窓口に申請し手続きを行いましょう。
申請が認定されると「介護保険負担限度額認定証」が交付されます。介護施設を利用する際に、窓口で認定証を提示するとサービスを受けられます。もし提示しなかった場合には、通常の料金となるため注意してください。
高額介護サービス費
高額介護サービス費とは、1カ月で介護サービスに支払った総額が負担限度額を超えていたときに、超過分が払い戻される制度のことです。所得に応じて負担の上限額が決まっています。
なお、介護保険を使用せずに利用したサービスや、食費や居住費(滞在費)、住宅改修費、特定福祉用具購入費などは対象とはなりません。
自己負担額をオーバーすると、市町村から申請書が郵送されてきます。一度手続きをしておけば、次回以降は自動的に口座へ振込みとなりますので、忘れずに行いましょう。
家計の負担を軽減する公的制度
親の介護をしている場合の、子どもの家計負担を軽減する公的制度や税制優遇を3つ紹介します。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、同一月(1日から月末)にかかった医療費の自己負担額が、一定の金額を上回った場合、限度額を超えた分が払い戻される制度です。
上限は年齢や所得によって異なります。ただし、医療費には入院時の食事代は含まれません。自己負担額は世帯で合算できますが、同じ公的医療保険(健康保険組合・協会けんぽ・市町村国保など)に加入していることが条件です。
事前に 医療費が高額になるとわかっている場合には、「限度額適用認定証」を取得しておくと上限額以上の支払いをせずに済みます。
障害者控除
障害者控除とは、納税者自身、同一生計配偶者または扶養親族が所得税法上の障害者に当てはまる場合、所得控除を受けられる制度です。
身体障害者手帳を交付された方ではなくても、65歳以上で障害者に準ずる者として市町村の認定を受けている場合には、障害者控除の対象になります。各自治体に認定要件を確認してみましょう。
医療費控除
医療費控除とは、1年間(1月~12月)にかかった医療費が10万円を超えた場合に受けられる所得控除のことです。自分自身と生計を一にする配偶者や親族の分も合算できます。同居・別居は問いません。
通院の交通費や介護保険の対象となる介護費用も医療費控除にできますので、1年分のレシートや領収書は取っておきましょう。なお、年間所得が200万円未満の場合は、医療費が10万円に満たなくても、総所得金額の5%を超えていれば医療費控除の適用を受けられます。
まとめ
老人ホームの費用は施設の種類や介護期間によって異なり、公的施設は比較的安価(5万~15万円/月)である一方、民間施設ではサービスの充実度によって費用が大きく変動(15万~35万円/月)します。入居時にかかる一時金も施設によっては数千万円に及ぶことがあり、事前の資金計画が重要です。
一般的な介護期間は3~4年で、老人ホーム入居の場合、総費用は約440万円、在宅介護を含めると約630万円に達することもあります。年金だけで賄えるかどうかは、親の受給額に依存します。厚生年金を受給している場合でも、施設によっては費用が不足するため、預貯金や他の資金準備が必要です。
親の支払いが難しい場合、子どもが負担を求められるケースもありますが、公的支援制度を活用することで負担を軽減できます。例えば、「特定入居者介護サービス費」は低所得者向けに食費や居住費を軽減し、「高額介護サービス費」は一定額を超えた介護費用を払い戻す制度です。さらに、税制優遇措置として「医療費控除」や「障害者控除」も活用できます。
老人ホームの費用負担を軽減するには、事前の情報収集と公的制度の活用が不可欠です。